2025年9月28日に私は知識の更新講習の一部を担当いたしました。今回の講習では、労働市場の知識や労働関係法令、社会保障制度など幅広いテーマを扱いましたが、単に法改正の条文や制度を一つひとつ説明するのではなく、「なぜ今このような方向に政策が進んでいるのか」を理解できるように工夫してお伝えしました。
働き方改革以降、労働分野における法改正は目まぐるしく続いています。時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金、雇用保険制度の改正、育児・介護休業法の改正など、個々の改正を追いかけるだけでも大変な状況です。しかし、これらはバラバラに存在しているのではなく、人口減少や人手不足といった大きな社会課題に対応するための一連の流れの中に位置づけられています。
特に重要なのは、両立支援の強化です。育児や介護と仕事の両立はもちろん、治療と仕事の両立についても制度整備が進められており、「働き続けられる社会」を目指す方向性が明確になっています。これは単に個人を支援するだけではなく、人材不足に直面する企業が「今いる人材をどう活かし続けるか」という経営上の課題にも直結しています。人材を確保することが難しい時代だからこそ、一人ひとりが力を発揮しながら働き続けられる環境整備が必要なのです。

今回の講習では、労働市場の統計や最新の調査データを紹介しながら、政策が目指す方向と現場で求められる対応を整理しました。たとえば完全失業率や有効求人倍率の推移を示しつつ、人材確保が難しい現状を数値で確認し、その上で制度の狙いを理解することで、参加者の皆さまに「改正の意味」をより実感していただけるようにしました。
また、人事考課やマネジメントの視点についても軽く触れ、労務管理上の知識だけでなく、人材育成や組織運営にどうつなげていけるかを考えていただく機会となりました。特に人事考課に潜むエラー(ハロー効果や期末効果など)を取り上げ、公平で納得感のある評価を行うための視点を共有しました。
今回の更新講習を通じて、参加者の皆さまには、単なる法令知識の習得にとどまらず、「法改正の背景にある社会の動きとキャリア支援の方向性」を理解していただけたと感じています。今後も、変化の激しい労働市場において、知識を点ではなく線として捉え、実務に活かす力を養える講習を提供してまいります。
山田真由子